女歌舞伎『新雪之丞変化』は華やかなアングラ劇2025年03月09日

 下北沢ザ・スズナリでProject Nyx公演・女歌舞伎『新雪之丞変化』(原作:三上於菟吉、作:白石征、構成:水嶋カンナ、演出:金守珍、出演:水嶋カンナ、寺田結美、森岡朋奈、小谷佳加、佐野美幸、もりちえ、浜田えり子、染谷知里、紅日毬子、本間美彩、いまいゆかり、他)を観た。

 『雪之丞変化』は、1934年(昭和10年)に『朝日新聞』に連載された人気時代小説で、何度も映画化・舞台化されてきた。だが、私は題名を知っているだけで、これまでに読んだことも観たこともなく、ほとんど予備知識なしに観劇した。休憩なしの2時間、アングラと歌舞伎が融合した妖しくも華やかな舞台に魅了された。

 江戸末期、大塩平八郎の乱の後の12代将軍家慶の頃の話である。歌舞伎の花形女形役者・雪之丞が、長崎で殺された親の仇を江戸で討つ復讐譚である。その復習譚に、雪之丞に惚れる奥女中、女盗賊、悪徳役人、悪徳商人などが絡んで話が展開する。どんでん返しもある。

 ストーリーも面白いが、場面転換ごとに繰り広げられる舞踏パフォーマンスが素晴らしい。ロックで艶やかな和服が乱舞する。暗闇の中でマッチの灯りをかざし、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」(寺山修司)と朗詠したりもする。

 女歌舞伎と銘打っている通り、出演者は全員女性である。雪之丞は花形女形役者なので男性だが、それを女性が演じているからややこしくて面白い。髑髏や狐面が頻出し、不気味な気配を盛り上げている。

 士部山斎という悪党には迫力があった。片目を黒い仮面で覆い、髑髏を手に怪しく笑う異形は、いかにもアングラという雰囲気だ。演じた女優・小谷佳加が、昨年末に観た文化座の『しゃぼん玉』で気のいいオバチャンを演じていた俳優だと知って驚いた。