高畑淳子と渡辺えりのパワーを感じる『さるすべり』2024年04月14日

 紀伊国屋ホールでオフィス300公演『さるすべり』(作・演出:渡辺えり、出演:高畑淳子、渡辺えり)を観た。チラシには「新劇とアンダーグラウンド、歩んできた道の違う同い年の二人が奇跡のコラボ!」とある。

 この芝居、コロナ禍の2020年に上演した『さるすべり~コロナノコロ~』をリライトした作品だそうだ。高畑淳子との共演にあたってアテ書きも加えているようだ。

 古家に住む二人の老婆、独身の長女・節子と出戻りの妹・和子の話なのだが、時々、女優・高畑淳子と演出家・渡辺えりが節子と和子に混入してくる。シームレスに役が変遷していくのが面白い。

 舞台は古家の居間で、テーブルやソファをはじめ様々な調度品が並んでいる。開演時間前、客席の照明が点いている状況でヘルメットに作業着の人間が舞台に現れ舞台設定の最終作業を始める、その作業者の中には高畑淳子と渡辺えりも混じっていて、いつの間にか多重構造の芝居が始まっている。

 二人の老婆はコロナ禍の自粛生活下にある。自粛を始めたのは4年前というから2024年の現代という設定だ。テレビが壊れていて、外部からの情報もなく、自分たちがなぜ自粛しているのかもわからなくなっている。そんな空間に、思い出話から湧き出る過去の情景が重なり、女優と演出家の思い出までが重なってくる。

 高畑淳子と渡辺えりは共に69歳、私より6歳若い。若い頃の6歳違いは大きいが、齢を重ねると6歳違いでも同世代に感じられてくる。渡辺えりの台詞に紅テント、黒テント、別役実、清水邦夫などが出てくるのが懐かしくて楽しい。

 二人の女優のパワーが、暗いコメディを包み込んで圧倒するような舞台だった。