草彅剛の『ヴェニスの商人』はオーソドックスで現代的 ― 2024年12月13日
日本青年館ホールでシェイクスピアの『ヴェニスの商人』(訳:松岡和子、演出:森新太郎、出演:草彅剛、野村周平、佐久間由衣、大鶴佐助、長井短、華優希、小澤竜心、忍成修吾、他)を観た。森新太郎演出のシェイクスピアを観るのは『ジュリアス・シーザー』、『ハムレットQ1』に次いで3本目である。
草彅剛がシャイロックを演じるせいか劇場ロビーは女性客であふれ、グッズ売り場は長蛇の列だった。開演30分前には行列への参加が打ち止めになっていた。アイドルのコンサート会場のようだ。
事前にネットで観た舞台写真のシャイロックはシックなコートにネクタイ姿の現代衣装である。上演時間は2時間20分(休憩を除く)と、さほど長くない。現代風にアレンジした圧縮版だろうと予感した。だが、そうではなかった。
観劇前に新潮文庫の『ヴェニスの商人』(福田恆在訳)を読み返した。上演台本の松岡和子訳とは異なるが、今回の上演はほとんど省略のない原文通りの台詞のようだ。若い溌剌とした役者たちがシェイクスピアのゴチャゴチャした台詞を軽快にこなしているのに感心・感動した。やはり、読むより聞く方がいい。
『ヴェニスの商人』は誰でもが知っている展開のエンタメ劇である。ユダヤ人であるが故に蔑視されるシャイロックから見れば悲劇とも言えるが、大筋は悪役シャイロックを懲らしめる喜劇である。今回の上演も、そんなオーソドックスな造りだと感じた。
と言うものの、かなりユニークな舞台である。装置はシンプルな抽象空間で、役者の衣装は古今を混合して超時代的である。そして、役者全員(17人)が常に舞台上にいるという演出が面白い。
開幕時に役者全員が下手から一列になって舞台に登場する(ここで客席から拍手がわくのが不思議)。舞台に上がった役者たちは後方ホリゾントの横一列の長椅子に正面を向いて座り、出番になると舞台中央に出て来てる。舞台転換が迅速なテンポのいい芝居になる。
複数の役を演じる役者や途中で衣装が変わる役者もいるが、衣装替えも後方の長椅子で行う。と言っても、長椅子は楽屋ではない。あくまで舞台である。裁判で負けた後のシャイロックは終幕まで長椅子で俯いている。
この舞台は『ヴェニスの商人』を上演すると同時に、それを演じる役者もまた演じられているという入れ子構造を感じさせる。16世紀に上演された『ヴェニスの商人』の舞台を相対化すると同時に普遍化する仕掛けかもしれない。
ユダヤ人差別やキリスト教の傲慢を反映した『ヴェニスの商人』という喜劇の普遍性とは何か。そんなことに思いをはせると、現代と16世紀が溶融する混沌に引き込まれていく。
草彅剛がシャイロックを演じるせいか劇場ロビーは女性客であふれ、グッズ売り場は長蛇の列だった。開演30分前には行列への参加が打ち止めになっていた。アイドルのコンサート会場のようだ。
事前にネットで観た舞台写真のシャイロックはシックなコートにネクタイ姿の現代衣装である。上演時間は2時間20分(休憩を除く)と、さほど長くない。現代風にアレンジした圧縮版だろうと予感した。だが、そうではなかった。
観劇前に新潮文庫の『ヴェニスの商人』(福田恆在訳)を読み返した。上演台本の松岡和子訳とは異なるが、今回の上演はほとんど省略のない原文通りの台詞のようだ。若い溌剌とした役者たちがシェイクスピアのゴチャゴチャした台詞を軽快にこなしているのに感心・感動した。やはり、読むより聞く方がいい。
『ヴェニスの商人』は誰でもが知っている展開のエンタメ劇である。ユダヤ人であるが故に蔑視されるシャイロックから見れば悲劇とも言えるが、大筋は悪役シャイロックを懲らしめる喜劇である。今回の上演も、そんなオーソドックスな造りだと感じた。
と言うものの、かなりユニークな舞台である。装置はシンプルな抽象空間で、役者の衣装は古今を混合して超時代的である。そして、役者全員(17人)が常に舞台上にいるという演出が面白い。
開幕時に役者全員が下手から一列になって舞台に登場する(ここで客席から拍手がわくのが不思議)。舞台に上がった役者たちは後方ホリゾントの横一列の長椅子に正面を向いて座り、出番になると舞台中央に出て来てる。舞台転換が迅速なテンポのいい芝居になる。
複数の役を演じる役者や途中で衣装が変わる役者もいるが、衣装替えも後方の長椅子で行う。と言っても、長椅子は楽屋ではない。あくまで舞台である。裁判で負けた後のシャイロックは終幕まで長椅子で俯いている。
この舞台は『ヴェニスの商人』を上演すると同時に、それを演じる役者もまた演じられているという入れ子構造を感じさせる。16世紀に上演された『ヴェニスの商人』の舞台を相対化すると同時に普遍化する仕掛けかもしれない。
ユダヤ人差別やキリスト教の傲慢を反映した『ヴェニスの商人』という喜劇の普遍性とは何か。そんなことに思いをはせると、現代と16世紀が溶融する混沌に引き込まれていく。
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