サルトルの『恭しき娼婦』を観劇 ― 2022年06月12日
紀伊国屋ホールでサルトルの芝居『恭(うやうや)しき娼婦』(演出:栗山民也、出演:奈緒、風間俊介、他)を観た。
この戯曲のタイトルはかなり以前から知っていたが内容は知らなかった。今回の上演を知り、戯曲を読んだ(古い文学全集のサルトルの巻に芥川比呂志訳が収録されていた)。米国の黒人差別を扱っていて、初演は1946年だ。かなりストレートな黒人差別告発的な内容である。戯曲からはアジプロ劇のような印象を受け、少ししらけた。
だが、舞台での上演を観ると緊張感や絶望感が伝わってきて、引き込まれた。戯曲の印象と観劇の印象がくい違うのは、私が戯曲を表面的にしか読んでいなかったということである。反省した。
南部の街の娼婦の部屋で進行する話である。娼婦は冤罪で追われている黒人青年の無実を知っているが、上院議員の息子に偽証を強いられる。真犯人はその息子のいとこで前途を嘱望されている人物である。当初、娼婦は偽証を拒否する。だが、息子の父親である上院議員が登場し、その巧みなレトリックにまるめこまれて偽証にサインする。
そんな展開だが、娼婦と上院議員の息子の感情の起伏や会話の推移が面白い。外部情況を切実に反映させた芝居になっている。
サルトルは実際の黒人冤罪事件を素材にこの告発的な戯曲を書いたそうだ。70年以上昔である。その後のアメリカ社会は変わったかもしれないが、相変わらずの部分や新たに現れてきた課題も多い。それ故に今回の上演になったのだろう。
蛇足だが、私が『恭しき娼婦』という芝居に反応した一因は、かの状況劇場の第1回公演がこの芝居だったと聞いていたからである(画像下部)。『状況劇場全記録』という本によれば、1963年に明治大学のホールで、星山初子(李礼仙)や大鶴義英(唐十郎)らの役者で上演している。サルトル劇はこれのみで、その後は唐十郎作品になったようだ。
この戯曲のタイトルはかなり以前から知っていたが内容は知らなかった。今回の上演を知り、戯曲を読んだ(古い文学全集のサルトルの巻に芥川比呂志訳が収録されていた)。米国の黒人差別を扱っていて、初演は1946年だ。かなりストレートな黒人差別告発的な内容である。戯曲からはアジプロ劇のような印象を受け、少ししらけた。
だが、舞台での上演を観ると緊張感や絶望感が伝わってきて、引き込まれた。戯曲の印象と観劇の印象がくい違うのは、私が戯曲を表面的にしか読んでいなかったということである。反省した。
南部の街の娼婦の部屋で進行する話である。娼婦は冤罪で追われている黒人青年の無実を知っているが、上院議員の息子に偽証を強いられる。真犯人はその息子のいとこで前途を嘱望されている人物である。当初、娼婦は偽証を拒否する。だが、息子の父親である上院議員が登場し、その巧みなレトリックにまるめこまれて偽証にサインする。
そんな展開だが、娼婦と上院議員の息子の感情の起伏や会話の推移が面白い。外部情況を切実に反映させた芝居になっている。
サルトルは実際の黒人冤罪事件を素材にこの告発的な戯曲を書いたそうだ。70年以上昔である。その後のアメリカ社会は変わったかもしれないが、相変わらずの部分や新たに現れてきた課題も多い。それ故に今回の上演になったのだろう。
蛇足だが、私が『恭しき娼婦』という芝居に反応した一因は、かの状況劇場の第1回公演がこの芝居だったと聞いていたからである(画像下部)。『状況劇場全記録』という本によれば、1963年に明治大学のホールで、星山初子(李礼仙)や大鶴義英(唐十郎)らの役者で上演している。サルトル劇はこれのみで、その後は唐十郎作品になったようだ。
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