はじめてのトウモロコシ栽培はメデタシメデタシ2012年08月19日

 八ヶ岳山麓の山小屋のささやかな畑でトウモロコシを収穫した。たまたまホームセンターで種を手にして衝動買いし、5月の連休に植えたのが順調に生育した。あの小さな種がほんの3カ月ばかりで2メートルもの巨体になった。あたりまえの自然の摂理にあらためて感動した。

 現在、野菜の入門書を3冊手元に置き、この3冊を適当に参照しながら野菜を栽培している。トウモロコシ栽培は難易度中級のようだが、月に1~2回しか山小屋に行かず、さほど手間もかけなかったのにトラブルなく生育してくれた。

 ただし、一点だけ当初の想定外の手間があった。
 トウモロコシを植えたとき、現地の友人から「トウモロコシはシカやイノシシにやられやすいから、回りを網で覆わねばならない」と聞かされていた。彼自身はトウモロコシの栽培はしていない。当初は、そんな面倒な対策をする気はなく、とりあえず植えてみただけなので、シカにやられたらダメモトであきらめようと思っていた。
 しかし、1メートル位に育ってくると現金なもので、このまま順調に育ってほしいと思うようになった。入門書には獣害対策などは書いていないが、鳥除け対策の記述はあった。シカやイノシシ対策のネットはかなり大げさで少々高価だ。結局、ホームセンターで鳥除けネットを購入し、支柱を立ててトウモロコシを囲むことにした。

 収穫の時期が近づいてきたころ、友人から「トウモロコシは1本に1つだけ残し、他の実は取ってしまうらしい」と言われた。3冊の入門書のうちの1冊には確かに「1株に1本の雌穂を残して生育させ、収穫します。他の雌穂は小さなうちに取り除きます」と書いてある。しかし、他の2冊にはそのような記述はない。
 多数決で決めるなら、何もしないということになる。この時期、すでにどの株も2本の実が大きくなりかかっていた。「小さなうち」という時期は失しているように思えた。だから、易きに流れてそのままにした。
 そのとき、アメリカの広大なトウモロコシ畑のことを考えた。あんな畑でいちいち雌穂を1本だけ残す作業をしているとは思えない。何もしなくても大丈夫だろうと、自分自身を納得させた。

 それから約2週間後、収穫を目的に山小屋へ行った。実は、その頃になってはじめてトウモロコシが鮮度にシビアな特異な作物だと知った。

 ある酒席で「トウモロコシを栽培しています」と言うと「新鮮なトウモロコシは美味しいですよね」という反応があり、「そうか、新鮮なトウモロコシは美味しいのか」と思った。しかし、収穫後1時間もすると味覚が落ち、24時間で味覚も栄養素も半減するとは知らなかった。
 だとすれば、われわれが食べてきた八百屋やスーパーのトウモロコシのほとんどが不味いのであり、美味しいトウモコシを食べることができるのは収穫地周辺の限られた人々だけということになる。ホンマかいなという気もしたが、やがて、その通りだということを実感した。

 山小屋の収穫物は東京の家族に持ち帰るのが通例だ。しかし、鮮度がシビアとわかったからには、トウモロコシはそう簡単には行かない。帰京日の昼、ナベに湯を沸かし、まず2本のトウモロコシを摘み、素早く皮を剥いて熱湯で4分ほどゆでた。ナベには2本しか入らないので、この作業を何度も繰り返した。そして、ゆで上がったトウモロコシを東京に持ち帰った(昼食替わりに現地でも食べたが)。そのトウモコシはみずみずしくて甘味が強かった。もちろん、家族にも好評であった。メデタシメデタシ。

 さて、1株に1本の問題である。結論的には、食べるに値する立派なトウモロコシは1株に1本しかできなかった。2本目は発育不全だった。やはり、2本目は早めに取り除いた方がよさそうだ。
 後日、本屋で別の野菜入門書を立ち読みしていたら「3本の雌穂ができるので2本だけ残す」と書いてあった。しかし、私が栽培したトウモロコシは2本しか雌穂ができなかった。トウモロコシにもいろいろな種類があるのだろう。

 あらためて調べてみると、世界中で栽培されているトウモロコシのうち食用は4パーセントにすぎず、大半は飼料とコーンスターチになるそうだ。わずかな食用のうちの多くは缶詰などの加工品になると思われる。新鮮なトウモロコシを食べるというのは、かなり特殊で贅沢な消費方法なのだ。

 トウモロコシ栽培中にアメリカの広大なトモロコシ畑を想起したが、きっとあちらは飼料などを作っているのであり、わがトウモロコシとは品種が違うのだろう。飼料用なら1株に何本もの実ができるような気がする。

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