リアリズムの書『台湾有事と日本の危機』に暗然とする2024年11月21日

『台湾有事と日本の危機:習近平に「新型統一戦争」シナリオ』(峯村健司/PHP新書)
 台湾有事と言えば、中国の軍事侵攻を想像する。だが、諜報戦やサイバー攻撃などを駆使した非軍事的な作戦による「平和統一」という形の台湾併合があり得るらしい。そんなことを書いている本だと聞いて関心がわき、次の本を読んだ。

 『台湾有事と日本の危機:習近平に「新型統一戦争」シナリオ』(峯村健司/PHP新書)

 著者は1974年生まれの元朝日新聞記者。北京特派員、ワシントン特派員を経て編集委員になり、2022年に朝日新聞を退社。現在はキヤノングローバル研究所主任研究員だそうだ。

 本書の刊行は今年(2024年)の2月、台湾で頼清徳が総統になった直後だ。それから9カ月、日本では総理が変わり、米国ではトランプが次期大統領に決まった。本書はトランプの復帰を想定した台湾有事のシナリオを提示している。

 2023年11月、訪米した習近平は、バイデンとの会談の際に「米国は台湾を武装することをやめ、中国の平和的な統一を支持すべきだ」と警告したそうだ。「平和的統一」が何を意味するか理解できなかった米国は何も回答しなかった。 

 著者は、バイデンは次のように即答するべきだったと述べている。

 「習主席、あなたのいう『平和的統一』とはどのような定義なのか。我が国は台湾に圧力をかけて強制的に『対話』に応じさせるようなことは断じて認めない」

 著者が想定する「平和的統一」のシナリオとは、「臨検」という形式の事実上の海上封鎖、機雷敷設、サイバー攻撃などによる経済的・精神的圧力で台湾の人々の心を潰し、戦意を喪失させ、統一を受け入れざるを得ない状況に追い込んでいくことある。

 台湾有事の際、中国が攻略すべき最重要ターゲットは日本だそうだ。米国の介入を阻止するには、米軍基地を抱える日本と米国の離間を図るのが重要課題となる。台湾有事は日本有事に直結するようだ。

 そんな事態への対応策を知りたい。著者の提言は、簡単に言えば日本の軍事力・防衛力のリアルな強化である。有事を未然に防ぐにはそれしかない、と言っているようだ。

 本書は情報分析に基づくリアリズムを説いている。正しく恐れなければならないのは確かだと思うが、リアリズムの索漠を感じた。

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