『朝日のような夕日をつれて2024』に驚いた2024年08月15日

 紀伊國屋ホールで『朝日のような夕日をつれて2024』(作・演出:鴻上尚史、出演:玉置玲央、一色洋平、稲葉友、安西慎太郎、小松準弥)を観た。

 私は鴻上尚史氏のエッセイはいくつか読んでいるが、芝居を観たことはない。『朝日のような夕日をつれて』という芝居の題名は聞いていたが、どんな内容かはまったく知らなかった。その有名作が上演されると知り、これまで縁がなかっった鴻上演劇を覗いてみたくなった。

 観劇後の感想は「驚いた」である。役者5人が高いテンションの早口で休憩なしの2時間しゃべり続ける。謳い続けるといった方が適切かもしれない。ストーリーは飛躍と錯綜に満ちている。内容はよくわからなかったが、男優5人の奮闘と芝居のエネルギーに圧倒された。

 『朝日のような夕日をつれて』は『第三舞台』の旗揚げ公演(1981年)作品で、鴻上尚史氏が22歳の時に初めて書いた戯曲である。その後、何度も上演を繰り返し、時代に合わせて改変してきたそうだ。今回の上演は2024年版である。

 冒頭では、チャットGTP、イーロンマスク、フェイスブックなどの言葉が飛び交い、ファイブGに関するギャグも登場する。鴻上氏より10歳上の高齢者である私にとっては、眩暈がしそうな展開だ。

 倒産の危機に瀕している玩具会社の話だと思って観ていると、なぜか『ゴドーを待ちながら』が浸透してくる。ゴドーも登場する。正確には、玩具会社の社員がゴドーに変異する。不条理劇というよりは、多重世界を詩的に謳いあげるような芝居だった。