星新一没後十年2007年11月28日

 星新一さんが亡くなって十年だそうだ。訃報を見たのはつい先日のような気がする。年を取ると体感時間が速くなる。
 書店の店頭に「星新一 空想工房へようこそ」というムック風の本が積まれていたので買った。最相葉月・監修となっている。今年4月に読んだ最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」は面白かった。

 最相さんの星新一評伝が面白いのは、日本SF史的な側面があり、私の青少年期との読書体験と重なる部分が多かったからだ。私が星新一をリアルタイムで読んでいたのは1969年頃まで(「人民は弱し官吏は強し」あたりまで)だった。あらためて振り返ってみると、その頃までが星さんの最盛期で、その後は長い「長老生活」に入ってしまったようだ。長老になってからもいい作品をいくつも書いているが、それらはやはり「長老的作品」のように思える。
 40代初めにして「長老」になってしまうのは「悲劇」とは言えないまでも、立場へのとまどいのようなものはあったかもしれない。作家に限らず、一仕事終えたあとの人生の過ごし方は古くて新しい課題だ。お手本はいくらでもあるのだが・・・。

 最相さんの評伝の中で少し驚いたのは、星新一と安部公房がライバルだったという見方だ。私にとっては二人とも愛読した作家だが、ライバル関係という視点で見たことがないので意外だった。
 初期作品の時代に荒正人が二人を比較して論じたことがあるそうだが、よく考えてみると共通点もありそうだ。晩年の雰囲気も似ているように思えてくる。

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