『オーランド』はジェンダーを越えて400年生きた永遠の青年2024年07月17日

パルコ劇場で『オーランド』(原作:ヴァージニア・ウルフ、翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也、出演:宮沢りえ、ウエンツ瑛士、河内大和、谷田歩、山崎一)を観た。

 小説を原作にした芝居である。過去に映画化・舞台化されたそうだが、私には未知の作品だ。私は20世紀初頭の女性作家ヴァージニア・ウルフについてほとんど知らない。その作品を読んだこともない。

 この芝居は、16世紀の英国貴族に生まれた青年が何百年も年を取ることなく、途中で男性から女性に転換して生き続ける話だと聞き、その異様な設定に興味がわいた。性転換する青年貴族を演じるのが宮沢りえ、というのも魅力的だ。

 宮沢りえ以外に4人の男優が登場する。だが、宮沢りえの一人芝居の趣が強い。男優たちが活躍しないわけではない。男優4人はコロスとして登場するだけでなく、さまざまな場面でユニークな存在として主役に絡んでくる。だが、宮沢りえの詩的な独白が圧倒的に多いので、一人芝居のような印象を受けるのだ。

 舞台装置はシンプルである。正面に巨大な壁があり、その中央に小さな出入口がある。壁にプロジェクションマッピンッグで映される沸き上がり流れ行く雲が時の流転を感じさせる。出入口はタイムトンネルにも見える。舞台下手の巨大なカシの木は時の流れに抗うように立ち続けている。 

 冒頭、青年貴族オーランドはエリザベス女王(一世)に愛される。ド派手な衣装の河内大和のエリザベス女王が不気味だ。外交官としてコンスタンティノープルに赴いたオーランドは、何日も眠り続けた後、女性に変身する。変身場面は鏡を見て驚くオーランド、という仕掛けになっていた。鏡の中から女性になった宮沢りえが出てくるシーンが印象的だ。

 オーランドは、15世紀にカシの木の下でノートに詩を書き始める。その詩が完成するのは400年後の現代である。人の一生が20年であろうが1000年であろうが、人が一生に成し遂げることにさほどの違いはない――そんな気分にさせられた。不思議な芝居だ。