『住所まちがい』は不条理コメディ ― 2022年10月06日
世田谷パブリックシアターで『住所まちがい』(原作:ルイージ・ルナー、上演台本・演出:白井晃、出演:仲村トオル、田中哲司、渡辺いっけい、朝海ひかる)を観た。
チラシの紹介文には「社長、大尉、教授の三名が、それぞれの理由で(略)同じ場所に居合わせる。三人が居合わせたこの場所はホテルなのか、事務所なのか、それとも出版社なのか(略)」とある。イタリアの現代作家のコメディだろうと思って観劇した。
舞台装置も芝居の造りも翻訳劇っぽい。しかし、かなり大胆に日本化されていた。登場人物も日本名で、それも仲村さん・田中さん・渡辺さんである。チラシで「大尉」となっていた人物は「元警部」に変わっていた。チラシ作成の段階では上演台本が確定していなかったのかもしれない。
この芝居、状況設定があきらかになるまでの導入部分がとても面白い。三人がやってきた場所が、同一の場所であるにもかかわらず、それぞれにとってはホテル(ゲストルーム)、事務所、出版社と異なっていて、実は三人ともまちがえているわけではない。三つの別々の現実が一つの空間を共有し、それぞれにとって好都合の事象が輻輳している。そして、彼らはこの空間から脱出できない。秀逸な設定である。
コメディと言えばコメディだが、サルトルの『出口なし』のようでもあり、不条理劇とも言える。芝居は、三人の男たちが、この状況をどう考えるかを巡って不毛な会話をくり広げる形で進行する。そして、終盤になって、不思議な登場の仕方で掃除夫のおばさんが現れ、部屋の掃除を始める。男たちは、このおばさんが単なる掃除夫なのか超越的存在なのかわからない――そんな展開の芝居である。
面白い芝居だが、ラストにもうひと捻り「出口なし」を突き抜けた世界の提示があれば、とも思った。
チラシの紹介文には「社長、大尉、教授の三名が、それぞれの理由で(略)同じ場所に居合わせる。三人が居合わせたこの場所はホテルなのか、事務所なのか、それとも出版社なのか(略)」とある。イタリアの現代作家のコメディだろうと思って観劇した。
舞台装置も芝居の造りも翻訳劇っぽい。しかし、かなり大胆に日本化されていた。登場人物も日本名で、それも仲村さん・田中さん・渡辺さんである。チラシで「大尉」となっていた人物は「元警部」に変わっていた。チラシ作成の段階では上演台本が確定していなかったのかもしれない。
この芝居、状況設定があきらかになるまでの導入部分がとても面白い。三人がやってきた場所が、同一の場所であるにもかかわらず、それぞれにとってはホテル(ゲストルーム)、事務所、出版社と異なっていて、実は三人ともまちがえているわけではない。三つの別々の現実が一つの空間を共有し、それぞれにとって好都合の事象が輻輳している。そして、彼らはこの空間から脱出できない。秀逸な設定である。
コメディと言えばコメディだが、サルトルの『出口なし』のようでもあり、不条理劇とも言える。芝居は、三人の男たちが、この状況をどう考えるかを巡って不毛な会話をくり広げる形で進行する。そして、終盤になって、不思議な登場の仕方で掃除夫のおばさんが現れ、部屋の掃除を始める。男たちは、このおばさんが単なる掃除夫なのか超越的存在なのかわからない――そんな展開の芝居である。
面白い芝居だが、ラストにもうひと捻り「出口なし」を突き抜けた世界の提示があれば、とも思った。
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