『へんてこりん、へんてこりんな世界』は想像したほどヘンではなかった2022年10月04日

 六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の『特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―』を観た。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』に関する展示である。

 展覧会のタイトルや紹介記事を見て、「不思議の国」や「鏡の国」を疑似体験するワンダーランド巡りを期待したが、思った以上にまともな展示だった。お化け屋敷や遊園地ではなく、あくまでギャラリーである。私の期待が的外れだったようだ。

 作者ルイス・キャロル(本名チャールズ・ラトヴィッジ・ドジソン:数学者)に関する写真などが多く展示されている。あの有名なテニエルの挿絵は、作者と画家との綿密な打ち合わせによって生まれた知り、なるほどと思った。テニエルの挿絵の銅版画の原版も展示されている。しげしげと眺めた。

 主人公のモデルであるアリス・ドゥルはキャロルが物語を語り聞かせた少女である。彼女の成人後の写真を、その後の活動の紹介を添えて展示している。不思議な気分で眺めた。

 この展覧会は文学史がメインではなく「文化的アイコンとしてのアリス」の展示である。全体を眺めると、世界中の多くの人々が「アリス」の世界に惹かれ、大きな影響を受けてきたことがわかる。私もその一人である。

 アリスの映画と言えばディズニーのアニメと実写版『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年公開)が思い浮かぶ。だが、今回の展示によって、それ以前の無声映画の時代から何度も映像化されてきたと知った。

 映画だけでなく舞台や美術に関わる展示もある。別役実の『不思議の国のアリス』『アイアム・アリス』も登場するかと期待したが、それはなかった。

 2020年来のコロナ禍のなかで、人類と感染症との攻防を『鏡の国のアリス』に出てくる「赤の女王」に例える議論を聞いた記憶がある。同じ場所にとどまるには全力疾走を続けなければならない、という話である。感染症にからめた「赤の女王」の展示があれば面白いのにと思ったが、そんな展示はなかった。

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