寺山修司の『青ひげ公の城』は夢幻の見世物芝居2022年09月15日

 下北沢ザ・スズナリでProject Nyx公演『青ひげ公の城』(作:寺山修司、構成:水嶋カンナ、演出:金守珍、出演:水嶋カンナ、のぐち和美、今川宇宙、他)を観た。

 半世紀以上昔のアングラの時代、私は唐十郎の状況劇場はよく観たが、寺山修司の天井桟敷の芝居は観ていない。当時、寺山修司はすでにビッグすぎて敬遠したくなる存在だった。あれから長い年月が経過し、寺山修司の芝居が上演されると知り、どんな舞台なのか、あらためて観たくなった。

 寺山修司の芝居を観るのは、何年か前に観た『毛皮のマリー』以来2回目だと思う。『青ひげ公の城』の初演は1979年、西武劇場だそうだ。今回の公演は女性だけによる美女劇と謳っている。その通り20数名の女優がきらびやかな衣装で夢幻的な舞台を紡ぎ出す。

 しかし、一人だけ男性が登場する。奇術師の渋谷駿である。開演前に舞台に現れ「スマホの電源を切ってください」などの観劇の注意を述べ、いきなり観客を巻き込んだ奇術を披露する。彼が舞台回しとのことだが、芝居が進行していくなかで何度も鮮やかな奇術を披露し、目を見張らされた。

 実は私の席は最前列で、最初の奇術に巻き込まれた観客の一人が私だった。観劇前から奇術のトリックに引き込まれたのである。奇術にタネやシカケがあるのは当然だ。目を凝らして目の前でくり広げられる奇術のタネやシカケを見極めようとした。しかし、奇術師の手腕に感服させられるだけだった。

 この芝居の戯曲は未読なので、奇術師の登場が今回の公演独自の試みかどうかはわからない。元から「魔術師」という登場人物があるそうだが、それが次々と奇術を披露したかは不明だ。

 この芝居、一応の設定とストーリーがあり、現実と舞台が溶解していく展開だが、基本的には寺山修司らしい「見世物芝居」である。おどろおどろしくも蠱惑的な舞台装置のなかで奇抜な衣装の役者たりが幻想絵画のような情景を見せてくれる。それは、本来は不思議な奇術が日常光景のような摩訶不思議な世界である。

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