23年ぶりに『頭痛肩こり樋口一葉』を観た2022年08月21日

 紀伊國屋サザンシアターでこまつ座公演『頭痛肩こり樋口一葉』(作:井上ひさし、演出:栗山民也、出演:貫地谷しほり、増子倭文江、熊谷真実、香寿たつき、瀬戸さおり、若村麻由美)を観た。

 こまつ座旗揚げ公演(38年前の1984年)の演目で、その後何度も上演されている。私は1999年の公演(演出:木村光一、出演:有森也実、安奈淳、岩崎加根子、風間舞子、新橋耐子、渡辺梓)を同じサザンシアターで観ている。そのとき、戯曲も読んだ。しかし、23年前の記憶は霞んでいる。ぼんやりした雰囲気がかすかに浮かぶだけだ。

 観劇に先だって戯曲の前半だけ読んだが、記憶は甦らず初読とあまり変わらない。後半は読まず、観劇中のデジャブを期待した。だが、記憶の底にかすかに残るシーンを待っていても、ついにそれは現れない。この芝居と他の芝居の記憶が混ざり合っていたようだ。

 23年ぶりに観た『頭痛肩こり樋口一葉』は、やはりうまくできた芝居である。秀逸なタイトルが内容を的確に表している。貧乏のなか、24歳で夭折した樋口一葉(貫地谷しほり)の姿を、演劇でしか表現できない手法で描出している。

 舞台は一葉の住む借家、部屋には大きな仏壇がある。この空間で、明治23年から明治30年までの盂蘭盆や新盆のシーンが年替わりで演じられる。樋口一葉19歳のときから死後までの「お盆」シーンであり、樋口一葉にしか見えない幽霊・花蛍(若村麻由美)が毎回のお盆に登場する。最後は一葉も幽霊姿での登場になる。

 舞台を縦横に動き回る花蛍の役どころが抜群に面白い。花蛍の存在によって仏壇のある小さな借家に社会や世界が色濃く投影される仕掛けになっている。

 女性6人の芝居で、6人それぞれが過不足なく典型的な役割を担っているのにも感心した。

 観劇後、しばらくして気づいた。23年前に観た芝居の内容はほとんど失念していたが、私の頭の中にある樋口一葉のイメージは、この芝居によって作られた部分がかなり大きいようだ。

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