2時間半ノンストップの独白芝居『審判』を観た2022年06月23日

 わが家から徒歩30分のせんがわ劇場で『審判』(作:バリー・コリンズ、演出:加藤健一、出演:加藤義宗)を観た。加藤健一の息子・加藤義宗の一人芝居である。

 この一人芝居は、加藤健一が若い頃に何度も上演した演目で、そもそも彼が1980年に加藤健一事務所を立ち上げたのは『審判』を上演するためだったと聞いていた。それを息子がやるというので、きっと名作なのだろうと思ってチケットを手配した。

 私は加藤健一の芝居をさほど観ているわけではない。『審判』の内容も知らなかった。チラシをよく読めば内容を推測できたはずだが、勝手にブラック・コメディだと思っていた。だから、今回の舞台を観て、そのシリアスな迫力に驚いた。加藤健一事務所ホームページの加藤健一プロフィールを見れば「一人芝居『審判』とは」という内容説明がある。それに気づいたのは観劇後である。

 2時間30分休憩なしの一人芝居である。舞台は極めてシンプル、舞台中央にポツンと証言台があるだけだ。主人公は客席に向かって延々と2時間30分のにわたって証言を展開する。彼は、第二次大戦でドイツ軍によって修道院の地下室に閉じ込められていたソ連の将校で、解放された後に法廷で証言しているのである。

 その地下室には7名の将校が衣服を剥ぎ取られ、食料も水も与えられずに放置されていた。彼らは一人でも生き延びるため、クジで選ばれた者が自身の肉体を食糧として提供する道を選び、2ヵ月後に解放された時に生きていたのは二人、内一人は発狂していた。地下室で何があったかを証言できるのは、発狂していない生き残りである主人公だけ……そんな話である。

 あたかも客席が陪審員席のような仕掛けで、主人公は客席に向かって緊迫した極限状況についてしゃべり続ける。役者も大変だろうが、観客も緊張を強いられて疲れる。こんな舞台では、途中に休憩を入れるのは難しく、2時間30分ぶっ通しになるのも仕方ない。

 2時間30分の法廷を傍聴した気分になる芝居で、見終わるとぐったりした。

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