STAP事件批判の告発本『反オカルト論』は説得力がある2021年05月09日

『反オカルト論』(高橋昌一郎/光文社新書
 私はオカルトに懐疑的で、超能力や超常現象はトリックか脳内現象だと思っている。先日読んだ 『フォン・ノイマンの哲学』 の著者・高橋昌一郎氏にオカルト批判の新書があると知り、入手して読んだ。

 『反オカルト論』(高橋昌一郎/光文社新書)

 週刊新潮に連載したコラムをベースにした2016年刊行の新書で、教授と助手(理系女性研究者)の会話という読みやすい形式だ。気軽な雑談風とは言え、全8章それぞれの末尾に「解説」に加えて読者に問う「課題」があり、教科書のようである。この問いに真面目に対応して答案を作るのは大変だと思った。それはオカルトに騙されない判断力を涵養するための課題になっている。

 オビに「STAP事件は現代のオカルト!」とあり、あれが何故オカルトなのかピンとこなかったが、本書を読み終えて納得した。STAP事件をめぐる学界やメディアの対応への告発こそが本書のメインテーマのようにも思える。

 第1章はスピリチュアリズムの起源から始まる。それは、19世紀のフォスター姉妹(14歳と11歳)のイタズラによる「怪奇現象」であり、イタズラが大人たちの思惑によって社会現象にエスカレートしていくさまを紹介している。また、妖艶なミナ夫人の「霊能力」に優秀な科学者たちが容易に騙されていく話も描いている。

 続いてSTAP事件に話題が移っていく。著者は小保方晴子氏をミナ夫人らのような欺瞞の人と見なしている。欺瞞には自己欺瞞もあり、著者は彼女をコミュニケーション能力にに長けた「抜群に世渡りの上手な人物」とし、彼女を中心に関係者の思惑が現代科学の最先端の場でオカルトを発生させたという見解である。

 本書全体のおよそ三分の二が、スピリチュアリズムの解明とSTAP事件の分析に当てられている。「なぜ騙されるのか」「なぜ妄信するのか」「なぜ不正を行うのか」「なぜ自己欺瞞に陥るのか」「なぜ嘘をつくのか」という視点から、STAP事件がスピリチュアリズムと同様のオカルトだと追究していく展開に迫力がある。辛辣な小保方晴子氏批判、学界批判であり、私は納得・賛同できた。

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