『時間SFアンソロジー』で新旧の「時間モノ」に触れた2020年12月08日

『revisions 時間SFアンソロジー』(大森望 編/ハヤカワ文庫)
 3ヵ月前に『2010年代SF傑作選』(大森望・伴名練編/ハヤカワ文庫)というアンソロジーを読み、収録作20編のなかに「時間モノ」が一編もないのに多少のモノ足りなさを感じ、この分野で新機軸の傑作を生みだすのが難しくなっているのかなと思った。

 その後、大森望編の『時間SFアンソロジー』があるのを知り、読んでみた。
 
 『revisions 時間SFアンソロジー』(大森望 編/ハヤカワ文庫)

 翻訳2編、日本人作家4編の計6編が収録されている。最近のSF(私にとってSFの最近はこの20年ぐらい)のアンソロジーだろうと思って読み始めた。冒頭の『退屈の檻』(リチャード・R・スミス)は読みやすくて面白いが、古色蒼然の趣がある。読み終えてから解説を確認すると、1950年代の作品の新訳だった。最近作のアンソロジーと思ったのは私の早トチリで、あらためてオビを見ると「オールタイムベスト」とある。

 もう1編の翻訳『ヴィンテージ・シーズン』はC.L.ムーアの1940年代の作品の新訳で、この作者名にはかすかな記憶がある。初読の作品だが懐かしきよき時代のSFの雰囲気を感じた。

 日本人作家の4編は私にとってはいずれも最近作だった。『ノー・パラドックス』(藤井太洋)はややこし過ぎ、『時空争奪』(小林泰三)は破天荒過ぎ、私の頭ではついていくのが困難で、面白さを感じる前に頭が疲れた。

 私が面白いと思ったのはミステリー作家・法月綸太郎の『ノックス・マシン』である。この作家の作品を読むのは初めてだ。SFとミステリーをSF的に結合する力量と工夫に感心した。『五色の舟』(津原泰水)も魅力的で味わい深い作品だった。

 このアンソロジーを読み、あらためて自分の年齢(71歳)を感じた。古い作品は「古いなあ」と感じつつも安心して読める。自分の頭がついて行けない新機軸の作品だと、じっくり理解しようという意欲が湧きにくい。老化だと思う。