今年は歴史の転換点だろうか?2020年10月30日

『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』(出口治明・鹿島茂/文春ブックレット/文藝春秋)
 本屋の店頭に積まれていた薄い本に手が伸びた。

 『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』(出口治明・鹿島茂/文春ブックレット/文藝春秋)

 週刊文春に連載した対談をまとめたブックレットで、博識の二人がどんなことを語り合っているのか興味がわき、つい購入してしまった。

 歴史放談・時事放談に近い楽しい対談で、週刊誌を読む気分で短時間で読み終えた。現在のコロナ時代を世界史を展望する視点で捉えようとした対談である。現在進行形の情況を歴史を視る目で把握するのは重要だと思う。だが、それは容易ではないとも思う。目の前の事柄は過大評価か過小評価になりがちだ。かなりの時間が経過しなければ実相は見えてこない。

 西欧におけるルネサンス、宗教改革、合理主義の誕生などは、人間の考え方の根底を変える歴史の転換だった。その転換は疫病(ペスト)がきっかけだったと二人は語っている。言われてみれば、そんな気がする。歴史を動かす大きな要因の一つが疫病であることは確かだと思う。

 鹿島氏は、フランス史の16世紀、17世紀、18世紀、19世紀、20世紀の始まりの事例をふまえて「世紀は15年ほど遅れて始まる」という自説を唱え(例:20世紀の始まりは1914年の第一次大戦)、21世紀は2020年のコロナで始まるのではないかと述べている。いま、私たちは歴史の転換点にいるのかもしれない。当事者には判断不能だが……