安彦良和氏の『革命とサブカル』は刺激的な本だ2019年12月17日

『革命とサブカル:「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅』(安彦良和/言視舎)
 同世代の知人に薦められて、2018年10月刊行の次の本を読んだ。

 『革命とサブカル:「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅』(安彦良和/言視舎)

 著者の安彦良和氏は高名なアニメーター・漫画家である。だが、私にはほとんど未知の人で、その作品に接したことはない。機動戦士ガンダムの名ぐらいは知っているが、どんな内容かは知らない。

 本書によって、安彦良和氏が私とほぼ同世代(1歳上の1947年生まれ)の元全共闘(弘前大学)だと知った。大学中退後に虫プロに入社し、アニメーターとして活躍した後、漫画家に転身したそうだ。

 全共闘運動から約半世紀が経過し著者が70歳を過ぎた時点で、自身が体験した「運動」の「総括」を試みたのが本書である。そのため、かつて活動を共にした「闘士」たちに再会し、「あの時代」を現時点でどう考えているか対話している。その中には連合赤軍事件の当事者として長期の獄中生活を送った二人もいる。

 本書の前半は7人の元活動家(安彦氏と同世代)と1人のアニメ研究家(安彦氏より11際年下)との対話の記録で、後半は対話をふまえたうえでの安彦氏の論考である。

 著者と同世代の私にとっては何とも言えない生々しい圧迫感のある内容である。「重さ」と「軽さ」の入り混じった苦さを感じる。

 『革命とサブカル』というタイトルの含意は、「革命」を志向・夢想した時代が1970年頃に終焉し、その後「サブカル」の時代に突入したということで、安彦氏自身の人生経験をふまえているようだ。「革命」や「サブカル」を肯定あるいは否定しているのではなく、それをキーワードに時代を「総括」しようとしているのである。

 安彦氏が「あの時代」を「総括」したうえで現状の「総括」を指向する気持ちはよくわかるし、安彦氏が真摯な人物だと思う。その論考には首肯できる部分も多いが、よくわからない部分もある。

 「あの時代」の「総括」は必要だと私も思う。と同時に、多様な「総括」があり得るので本当の「総括」なんてできるのだろうかという気もする。「総括」という言葉が私たちの世代特有の観念語のようにも思えてくる。

 いずれにしても本書は私には刺激になった。ここにいちいち記さないが、蒙を啓かれる知見もいろいろあった。70歳を過ぎた人間は、日々の日常に流されるだけでなく、おのれの来し方の「ソーカツ」をふまえて「時代」を考える時間をもたねばと思った。