ダリの超現実絵画の懐かしさ2016年12月09日

 国立新美術館で開催中の『ダリ展』に行った。閉幕が迫った平日だったが混雑していた。

 今やダリは私の頭の中では懐かしい往年の画家だが、少年時代に強烈な衝撃を受けたのは間違いない。半世紀以上昔の中学高校の頃、ダリは他のどの画家とも異なる異次元に屹立する魔法使いのような特別の画家だった。

 あの頃、ダリの画集で超現実的な光景に接し、その不思議な世界に引き込まれ恍惚感と不安感があいまざったしびれるような感覚を味わった。また、雑誌のグラビアページに掲載されたダリ本人の芝居がかったトリックスター的風貌を見て、そのうさんくささに惹かれた。ヒーローに見えた。そんな年頃だったのだ。

 いま思えば「超現実」という観念・感覚を私が初めて知ったのはダリの絵画によってだと思う。キリコやエルンストの不思議な世界にも惹かれたが、それは「幻想世界」であり、ダリが紡ぐニューロティックな青空の光景こそが「超現実世界」だった。

 ダリの絵画を観たという体験があるからこそ、あの光景を手がかりに、つかみ所のない夢のような「超現実世界」を文字化することも可能になった……そんな気もする。その意味でダリは文学的画家だ。

 いま観てもダリの超現実絵画は蠱惑的だ。しかし、それは日常的にくり返し観るべきものではない。観続けて飽きがくると魔法が解けてしまう。私たちの日常は超現実ではなくフツーの現実だ。ダリの超現実絵画は、たまに美術館で不意打ちのように観てこそ、その魅力と効能が発揮されるのだ。

 今回、ダリの超現実絵画を観て、少年の頃に見た甘美な悪夢に出会ったような懐かしさを感じてしまった。それを現実と見るか超現実と見なすかはよくわからない。

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