岡長平氏は超長命??2014年05月26日

『カバヤ児童文庫の世界』(岡長平/岡山文庫)、『岡山話の散歩』(岡長平/岡山文庫)
 もう1カ月以上前になるが、日経新聞の文化欄に載った「カバヤ文庫、心の栄養源」という記事(2014年4月18日)に惹かれた。「カバヤ文庫」という言葉が、古い古いかすかな記憶にひっかかったのだ。
 私が幼少の頃、カバヤのキャラメルは身近な存在だった。そのキャラメルに同封されている券を集めるとカバヤ文庫という本がもらえたのだ。友達が持っているカバヤ文庫を見た記憶はあるが、私自身は持っていなかった。私にとってカバヤ文庫は、途方もない量のキャラメルを買ってもらわなければ入手できない、遠い憧れのような存在だった。

 カバヤ文庫の発行日は昭和27年から昭和29年までだそうだ。私が4歳から6歳までの頃である。そんなに小さい頃だったのかと少し驚いた。幻のような記憶しか残っていない筈だ。

 カバヤは岡山の会社である。私は岡山県の瀬戸内海沿岸の町で子供時代を過ごしたので、カバヤが身近だったのだ。カバの形をした宣伝カーを見て興奮した記憶もある。カバヤが地元の会社だと知ったのは中学生の頃だ。当時、柴田錬三郎原作の『図々しい奴』というテレビドラマがヒットしていて、その主人公のモデルがカバヤの創業者だと聞いた。

 それはさておき、日経新聞の記事で私の古い記憶がゆさぶられたのは「カバヤ文庫」という言葉によるだけではない。その記事の筆者名「岡長平」もひっかかったのだ。遠い昔に、祖母や母から聞かされた名のような気がした。
 その岡長平氏なら、存命としてもかなりの高齢のはずで、日経新聞の記事の筆者とは思いがたい。

 好奇心から、その記事の筆者の著書『カバヤ児童文庫の世界』(岡長平/岡山文庫/2014.2.22)を入手した。
 著者略歴を見ると、岡長平氏は岡山県立図書館副館長で昭和29年生まれ。私より若い。私の幼少時の記憶にある「岡長平」とは別人である。

 調べてみると、私が幼少時に耳にしていた「岡長平」は明治23年生まれの郷土史家で、岡山ではかなりの有名人だったようだ。昭和45年に81歳で亡くなっている。
 昭和29年生まれの岡長平氏の『カバヤ児童文庫の世界』を収録している岡山文庫(日本文教出版株式会社)は古くからの地元の叢書のようで、明治23年生まれの岡長平氏の著作も多く収録されている。その中の1冊『岡山話の散歩』をネットの古本屋で購入し、2冊を並べてみた。

 同じ文庫で同じ著者名だが、この両人、世代はまったく異なる。ひょっとして孫が祖父の名を襲名したのだろうか。あるいは、偶然の同姓同名なのだろうか。著書の著者紹介には何も触れられていない。

 世代の異なる同姓同名の人が同じ分野で仕事をしていると、傍目にはすごく長命の人の仕事のように見える。そんなことは、いろいろな分野で発生していそうな気がする。