古代末期から現代までの東欧史を読んでグッタリ2022年10月16日

『ビザンツと東欧世界(講談社版 世界の歴史 19)』(鳥山成人/1978.5)
 かなり以前に古書で入手したまま未読だった次の歴史概説書を読んだ。

 『ビザンツと東欧世界(講談社版 世界の歴史 19)』(鳥山成人/1978.5)

 先日、似た題の概説書『ビザンツとスラヴ(中公版 世界の歴史11)』を読んだ流れで本書に手が伸びた。中公版はビザンツとスラヴが別の筆者だった。ビザンツは目下の私の関心領域なのでビザンツ史の部分は読みやすかったが、スラヴ史はゴチャゴチャしていて往生した。

 本書は一人の筆者がビザンツ史と東欧史をまとめて書いているので統一感はある。と言っても、読みやすくはない。なんと、本書は古代末期から第二次大戦後までの東欧史を概説しているのだ。3世紀から15世紀までのビザンツ帝国の興亡や周辺国の歴史に加えて、その後の東欧諸国の20世紀までを描いている。中世から現代までの時代の変転が目まぐるしく、記述について行くのが大変である。消化不良気味で頭がクラクラしてくる。

 第二次大戦後までの歴史と言っても、本書の刊行は40年以上前の1978年、ソ連は健在で東欧諸国は鉄のカーテンの向こうだった頃である。それだけに、現代史の部分は興味深いし、その後のこれらの国々がたどる現代史の淵源が見える気がする。

 現在、東欧という言葉はあまり目にしない。中欧と呼ぶことが多い。ちなみに、本書が取り上げるこの地域の現在の国名は以下の通りだ。

 ポーランド、チェコ、スロヴァキア、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、そして旧ユーゴスラヴィアのスロヴェニア、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビア、モンテネグロ、コソボ、マケドニア。

 これらの諸国の他にギリシアも本書の対象だが、本書を読み終えても、この多様な国々の歴史は複雑すぎてなかなか頭に入らない。

 この地域の歴史が複雑な理由はわかる。周辺の大国に翻弄され状況は変化し、人間のかたまりは移動するし、国境も一定ではなく、そこに暮らす人々と支配層の関係は流動的で、〇〇人が△△人に同化することもあり、民族意識という曖昧模糊としたものの形成はまだら模様である。そんな歴史を把握するのは容易ではない。

 第二次大戦後の東欧の状況を描いた次の一節を読んで、なるほどと思った。

 「中世以来東欧の各地に住みついていたドイツ人も、ドイツ軍の撤退にともない、あるいは戦後の強制移住によって、その多くが東欧から姿を消した。」

 あらためて、ドイツ人はあちこちに住んでいたのだと気づいた。元来、人々はさまざまな事情で移動をくり返したきた。しかし、近代以降に発生した民族意識によるあつれきが、人々の居住する場所を制約するようになったのだと思う。

 著者の次の言葉に共感した。

 「私は、通説には反するが、民族主義の歴史的役割を、東欧に関するかぎり、かなり否定的に考えている。」

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