遺跡発掘の興奮が伝わってくる『オリエント古代の探求』2021年05月03日

『オリエント古代の探求:日本人研究者が行く最前線』(清岡央・編/中央公論新社)
 子供の頃、いろいろな探検物語に接して血わき肉おどる思いで「探検」に憧れた。地球上から「秘境」が消滅しつつある現在、もはや「探検」という言葉は色あせつつあると感じていたが、次の本を読んで、そうでもないと思った。

 『オリエント古代の探求:日本人研究者が行く最前線』(清岡央・編/中央公論新社)

 海外で古代遺跡の発掘調査に携わっている研究者9人へのインタビューをまとめた本である。地表の「秘境」が消えても地中には未踏の遺跡が数多く眠っている。発掘という探求は過去に向かう限りなき探検だと気づいた。

 本書で紹介されている遺跡の場所は、アフガニスタン、エジプト、イスラエル。イラク、バハレーン、インド、パキスタン、シリア、キルギスなどである。現在も発掘作業が続いている遺跡がメインだが、バーミアンやパルミラのように「イスラム国」に破壊されて修復が課題になっている遺跡もある。

 現在、オリエント地域では二十を超える日本の調査団が活動しているそうだ。本書を読むと発掘現場の日々の苛酷さがわかり、それでも発掘を続ける研究者たちの探求心に感嘆する。彼らの話で面白いのは、新たな遺物を発見したときの興奮である。ときめきが伝わってくる。

 墳墓には「宝」が眠っていることが多いので、長い歴史のなかで大半が盗掘されている。だから、盗掘されていない墳墓を発見したときの喜びは格別である。そんなとき、まず警戒するのが盗掘だと知り、なるほどと思った。盗掘は過去のものではないのだ。

 人類の探求心が継続するのは喜ばしく、それが失われば人類は滅亡するだろうが、人々を盗掘にかりたてる欲望も消えることがないのか。

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