壮大な歴史絵本のような映画『クレオパトラ』2021年04月16日

 1963年公開の映画『クレオパトラ』をブルーレイで観た。私が中学生の頃に公開された大作映画で、当時いろいろ話題になっていたのは憶えている。エリザベス・テーラーやリチャード・バートンという俳優名もその頃に知った。だが、歴史やクレオパトラにさほどの関心がなかったので、映画を観たいとは思わなかった。

 中学生の頃に関心がなかった映画を70歳を過ぎて初めて観たのは、年を取って歴史への関心がわいたからである。いつかは観ようと思いつつ、ずるずると半世紀以上の時間が経過したとも言える。

 この10年ばかりで古代ローマ史関連の本をいくつか読んできたので、カエサルやクレオパトラに関する知識も多少は増え、そのイメージの定着に資するだろうと思って映画を観た。

 壮大な失敗作との評判を知ったうえで4時間を超えるこの映画を観て、失敗作と言われる由縁が理解できた気がした。長時間の映画にもかかわらず歴史のダイジェストを眺めている感じで、何とも平板な印象の物語なのだ。

 しかし、映像には圧倒された。CGのない時代に壮大なセット、華麗な衣装、膨大なエキストラを使って作り上げた情景には感心する。大規模な絵本を眺めている気分になる。20世紀フォックスの経営を傾かせるほどの製作費を費やしたということが納得できる。

 もちろん、映画の画像が歴史の実景だとは思わない。あくまでハリウッド的な古代ローマ時代の情景である。歴史の情景は、これまでさまざまな絵画で表現されてきた。同様に映画でも表現されてきた。それがフィクションであっても、歴史のあれこれを自分の頭の中に定着させるには有効だと思う。史実とおぼしき史料をベースに、画家や映画製作者が想像し創造した情景を借用してイメージを紡がなければ、歴史を知った気にはなれない。

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