「ギリシャ」でなく「ギリシア」?!2021年01月16日

 学問の世界で「ギリシャ」と表記するとバカにされると聞いたことがある。「ギリシア」と表記しなければならないそうだ。気にしたことがなかったので「ヘェー」と思った。

 新聞は「ギリシャ」と表記しているし(『朝日新聞の用語の手引き』にも明記)、外務省ホームページの国名一覧も「ギリシャ」だ。なのに、学問の世界では「ギリシア」らしい。

 手元の書籍の表題を調べると大多数が「ギリシア」だった。掲示写真は7つの出版社(筑摩書店、岩波書店、新潮社、集英社、中央公論社、講談社、河出書房)の書籍の背表紙で、すべて「ギリシア」である。『広辞苑』も『大辞林』も「ギリシア」だった。

 教科書の表記は、中学の「歴史」(東京書籍、帝国書院)は「ギリシャ」で、高校の「世界史」(山川出版)は「ギリシア」だった。ややこしい。

 この表記は出版社ごとに決まっているわけではなく、書籍ごとに異なるようだ。中公文庫の『世界史』(マクニール)や新潮文庫の『全世界史』(出口治明)は「ギリシャ」である。朝日新聞は「ギリシャ」だが、朝日新聞社刊行の『週刊朝日百科 世界の歴史』は「ギリシア」である。

 私たちの発声は「ギリシア」より「ギリシャ」に近い。一般向けは「ギリシャ」、専門性が高いと「ギリシア」という、よくわからない区分けがあるのかもしれない。旅行記なら「ギリシャ」、歴史を語るなら「ギリシア」のように思える。

 ちょっと気になるのが、ビジネスマン出身の大学学長・出口治明氏である。『全世界史』も『哲学と宗教全史』も「ギリシャ」だ。全然気にしていないのか、あえて「ギリシャ」なのか……前者のような気がする。