年末の復習として『ムッソリーニ』(世界史リブレット)を読んだ2020年12月28日

『ムッソリーニ:帝国を夢みた政治家』(高橋進/世界史リブレット 人/山川出版社)
 年初に読んだ 『ダンヌンツィオ 誘惑のファシスト』(ヒューズ=ハレット) がとても面白く、続いてちくま学芸文庫の 『ムッソリーニ:一イタリア人の物語』(ヴルピッタ) を読み、戦前に出版された 『ムッソリニ傳』(澤田謙) まで読んだ。それから1年近く経ち、ダンヌンツィオの強烈な印象は残っているが、ムッソリーニ像はおぼろになっている。

 頭の中で希薄になってきたムッソリーニの姿を多少でも呼び起こしておこうという気分で、今年4月刊行の次のブックレットを読んだ。

 『ムッソリーニ:帝国を夢みた政治家』(高橋進/世界史リブレット 人/山川出版社)

 この薄い概説書のムッソリーニ像はやや薄味である。年初に読んだヴルピッタの『ムッソリーニ』はもっと濃厚な印象だった。

 本書はムッソリーニの簡略な評伝であると同時に、第一次大戦から第二次大戦終結にいたるまでのイタリア史を概説している。少し引いた目線で、この時代のイタリアとムッソリーニを眺めると、その姿が薄味になるのも仕方ないと思えてくる。やはり、歴史の主役ではなく、日和見の不甲斐ない脇役に見えてしまうのだ。

 著者はヒトラーとムッソリーニを比較して、次の二点を指摘している。

 (1) ムッソリーニは、ヒトラーの『わが闘争』のようなマスタープランがなく、綱領もなかった。
 (2) ヒトラーは信頼できる側近に要職を専門的に分担させたが、ムッソリーニはファシスト幹部を信用せず多くの要職を自分で兼任した。

 ヒトラーを考えるうえでも興味深い見解だ。ムッソリーニは、知性や教養はヒトラーより上のように思えるし、ある時期まではヒトラーを目下に見る英雄だった。それが、いつしか逆転するのである。

 ナチス・ドイツが勢いづいた頃から、ムッソリーニはナチスを真似た政策を取り入れる。「第三帝国」を真似たか否かは知らないが「第三のローマ」をスローガンにしたのは面白い。「皇帝たちのローマ」「教皇たちのローマ」に続く「ファシストのローマ」である。

 本書には、1926年11月にムッソリーニが国旗にファスケスを組み入れたとある。ファスケスとは斧を結わえつけた儀仗で、古代ローマで使われていた。ムッソリーニ時代のイタリア国旗にファスケスがあしらわれているとは初耳で、Wikipedia を調べてみた。当時のイタリア王国の国旗にファスケスはない。国章にはファスケスがある。国旗ではなく国章の間違いではなかろうか。