なさけない話2020年05月20日

『骨は珊瑚、眼は真珠』(池澤夏樹/文春文庫)
 池澤夏樹の20年以上昔の短篇集を古書で入手して読んだ。

 『骨は珊瑚、眼は真珠』(池澤夏樹/文春文庫)

 最近、ちょっと彗星に興味をもち、彗星に関する小説を検索していたら、本書収録の「アステロイド観測隊」が引っかかった――それがこの短篇集を読んだ動機である。「アステロイド観測隊」は私が想定していたような話ではなかったが、かなり面白かった。

 本書には9篇の短篇が収録されていて、その中の『鮎』とい短篇の末尾には「註記」と題した10行の文章が付加されている。要は、この話はスペイン語圏の民話をベースにしているとの著者のコメントで、民話の紹介に続いて次のように書いている。

 「なお、芥川龍之介の「魔術」という話がほぼ同じからくりだから、どこかにすべての原点というべき話があるのだろう。」

 この註記で芥川の「魔術」を読みたくなり、書架の奥の古い文学全集の「芥川龍之介集」を確認した。かなり分厚い1巻で60篇以上の短篇が収録されている。「魔術」は入ってなかったので、あっさりあきらめた。

 数日後、たまたまのきっかけで『ちくま文学の森5・おかしい話』をパラパラめくっていて「魔術」が収録されているのに気づいた。3週間ほど前に読了したばかりの本で、読後感をブログに書いた。そのブログには、私が面白いと思った作品として「魔術(芥川龍之介)」をあげている。にもかかわらず、まったく失念していた。

 本を読んでも、時日が経つと内容を忘れるのは仕方ない。自身の備忘のため、気が向けば読後感をブログに書いたりしている。そんなことをしても3週間も経たないうちに忘れてしまうと思い知った。情けないことである。