ついにマルケスの『百年の孤独』を読了2020年05月05日

『百年の孤独』(ガルシア・マルケス/堤直訳/新潮社)
 読みかけたまま書架に眠っている本は少なくない。コロナ籠城の機会にそんな本を消化したいと思って手にしたのがマルケスの『百年の孤独』である。

 『百年の孤独』(ガルシア・マルケス/堤直訳/新潮社)

 マルケスがノーベル文学賞を受賞したのは1982年で、その頃に本書を購入して読みかけたのだと思う。マジックリアリズムの傑作と聞いて通勤電車の行き帰りで読み始めたが、あえなく挫折した。つまらなわけでも難解なわけでもないが、読み進めることができなかった。

 今回、気合を入れてこの小説に挑戦し、二日で読了した。面白かったが、かなり疲れた。濃厚な記述なので、サラサラと飛ばし読みができない。硬い飴を舐めるようにジックリ味わいながら読み進めないと、すぐにわけがわからなくなる。まとまった時間のスロー読書向きの本で、細切れの通勤電車で読むのは大変だと思った。数十年前に挫折した自分を弁護したくなった。

 『百年の孤独』は南米のマコンドという架空の町の約百年の歴史であり、その町の創設に携ったブエンディーア一族の始まりから終わりまでの物語である。「〇〇家の人々」といった大河ドラマ的な物語ではなく、多様で奇怪なエピソードを集成した神話・伝説・史書に近い。世界史や日本史の教科書を小説のように一気に読むのが難しいように、『百年の孤独』を一気読みするのは難しい。と言っても、登場人物たちの家系図などの予備知識が頭に入ったうえでの再読ならば、面白く一気に読めるかもしれない。(十分に勉強した後なら歴史の教科書も一気に読めるだろう)

 私は、登場人物を別紙にメモして、それを随時整理しながら、この小説を読み進めた。普通の小説なら全体の三分の一ぐらいで登場人物は出尽くすが、この小説は「史書」に近いから読み進めるごとに登場人物が追加されていく。私の作ったリストでは登場人物は六十数人になった。長編としては特に多いとは言えないかもしれないが、この小説は7世代にわたる話で、親や祖父と同じ名付けが多い。同じ名が次々に出てくるし、展開がめまぐるしいので、わけがわからなくなる。もちろん、作者はきちんと区別できるように書いている。だが、百歳をはるかに超える人物もいるので読者は混乱する。単なる登場人物リストだけなく、家系図も必要である。

 私は家系図までは作らなかったので、読書の途中で、登場人物たちの関係が祖母か曾祖母か高祖母か、あるいは兄弟か従妹か叔父姪かわからくなることが多かった。その都度、人物リストを整理して確認しながら読んだ。読書を中断し、人物リストの整理・確認をしてから読書を再開する――そんな、のんびりした贅沢な読み方も悪くないと思った。

 蛇足ではあるが、この小説を読んでいて、幼少期に惹かれた絵本「ちいさいおうち」を思い出した。