『ちくま文学の森16・とっておきの話』はやや期待外れか2020年04月28日

『とっておきの話』(ちくま文学の森15/筑摩書房)
 『ちくま文学の森6・思いがけない話』に続いて次の第15巻を読んだ。

 『とっておきの話』(ちくま文学の森15/筑摩書房)

 巻頭詩(アポリネールの「ミラボー橋」)に続いて20編の短篇(内6編が翻訳物)、私が面白いと思ったのは「名人伝(中島敦)」「月の距離(カルヴィーノ)」「にごりえ(樋口一葉)」「わら椅子直しの女(モーパッサン)」などである。

 全16巻の「ちくま文学の森」の16巻目は別巻なので、15巻目の本書が事実上の最終巻で、その表題が「とっておきの話」である。そもそも、短篇アンソロジーの本叢書全16巻の収録作すべてが、編者たちの「とっておきの話」のはずだが、その最終巻をあえて「とっておきの話」とするのだから、よりすぐりの傑作選だろうと期待した。期待値が高かっただけに多少の期待外れだった。どれも面白いが、私にとって格別に面白いとまでは言えない作品が多い。上記の中島敦、樋口一葉の作品は再読の名作で、名作と認めないわけにはいかない。

 「ちくま文学の森」全16巻の内の4巻を続けて読んで、編者たちと私との好みの共有点と違いがおぼろに見えてきた気がした。「違い」は世代の違いかもしれないと考え、編者4人を生年順に並べてみた。

 安野光雅 (1926年3月~ )
 森毅   (1928年1月~2010年7月)
 井上ひさし(1934年11月~2010年4月)
 池内紀  (1940年11月~2019年8月)

 最年長の安野光雅氏のみが存命で他の3人は物故者である。この4人、同世代かと思っていたら、意外と年齢差があり、安野氏と池内氏は14歳違う。私は1948年生まれなので、編者たちとの年齢差は22~8歳になる。これだけ幅があると世代論でかたづけるには無理がある。それは承知だが、私の仮説は、人は十代後半までに読んだ小説に強く刻印されるということである。

 このアンソロジーは、編者たちが二十歳以前に読んで強い印象を受けた小説がメインのような気がする。それは、私が二十歳以前に読んで強い印象を受けた小説と重複する部分もあり、ずれる部分もある。そんな気がする。

「ちくま文学の森」の4巻をたて続けに読んだが、残りの12巻は折を見てボチボチ読んでいこうと思う。こういうアンソロジーはガツガツ読むものではなく、心豊かに味読するものである。

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