ヤマザキマリ氏がピランデルロとシチリアを熱く語った2019年12月14日

 世田谷文学館で開催中の小松左京展の記念イベント「誰も語らなかった小松左京」と題するとり・みき氏とヤマザキマリ氏の対談を聞きに行った。

 小松左京研究会(小松左京のファンクラブ)発足時からの会員であるとり・みき氏が小松左京に詳しいのは当然である。ヤマザキマリ氏は『男性論』で安部公房や水木しげるを熱く語っていたが小松左京への言及はなかったと記憶している。

 ヤマザキマリ氏はとり・みき氏から「女版・小松左京」と呼ばれ、自身と小松左京の共通点を数多く発見して驚いたそうだ。生前の小松左京と面談する機会がなかったことを残念がっていた。

 対談で語られた二人の共通点は「ピランデルロ」「猫」「ビオラ」「倒産」などだが、関心領域の広さや強い好奇心による旺盛な行動力が似ているのだと思う。

 この対談で印象深かったのは、ヤマザキマリ氏が作家ピランデルロとその生地シチリアについて熱く語ったことである。イタリア在住が長いヤマザキマリ氏はピランデルロのファンである。ピランデルロはノーベル賞作家ではあるが、イタリアでもさほど読まれているわけではなく、ピランデルロについて語りあえるイタリア人はほとんどいないそうだ。

 私がピランデルロという名を知ったのは、小松左京が卒論に書いたと紹介されていたからであり、それ以外にこの作家の名を目にする機会はなかった。戯曲『作者をさがす六人の登場人物』は何年か前に読んでみたが、いまひとつピンとこなかった。

 昨年はシチリア旅行をしピランデルロの生地アグリジェントも訪れたが、ギリシアの遺跡の町でピランデルロを想起するものを目にする機会はほとんどなかった。

 ヤマザキマリ氏によれば、文明の十字路という宿命ゆえに支配者が何度も交代したシチリアという場所は、砂上の楼閣のような非現実をたたえた土地であり、ピランデルロの作品にはそれが色濃く反映されているそうだ。

 私は、小松左京を読みシチリアにも行ったにもかかわらず、そんなことは何も知らなかった。あらためてピランデルロの作品を読み、シチリアの風土の反映や小松左京への影響を感得できるか確認したくなった。