『オアシス国家とキャラヴァン交易』の主役はソグド商人2019年07月26日

『オアシス国家とキャラヴァン交易』(荒川正晴/世界史リブレット/山川出版社)
『オアシス国家とキャラヴァン交易』(荒川正晴/世界史リブレット/山川出版社)

 この冊子は目下の私の関心事であるソグド人に関する記述がメインで、興味深く読了できた。目次は以下の通りである。

   1 オアシス国家と交易
   2 国際商人としてのソグド人
   3 オアシス国家のなかのソグド人
   4 ユーラシアの変動とソグド商人
   5 唐帝国の成立とソグド商人

 本書の刊行は2003年12月、『ソグド商人の歴史』(E・ドゥ・ラ・ヴェシエール)がパリで出版された翌年である。本書巻末の参考文献にはその原著も掲載されているが、他の多数の文献は日本人研究者のものだ。この分野では日本人研究者も頑張っているのだと感じた。

 中央アジアには紀元前後の頃から大小多数のオアシス国家があり、主なオアシス国家はタリム盆地周辺やソグディアナ地域にあった。中央アジア西端のソグディアナのオアシス国家(サマルカンドなど)からは国際商人が出現する。本書はそのソグド商人に着目し、彼らの活動の実態を描いている。

 ソグド人の聚落は中央アジアの広範囲に存在し、交易のネットワークを築いていた。北方遊牧民国家や唐帝国の直接支配や間接支配のもとでのソグド人のしたたかさが面白い。

 シルクロードの実態を知るということは、そこで展開されてきた交易の実態を知るということである。それはソグド商人の活動に関する知見を深めることである……と納得できた。