台湾から与那国島への「3万年前の航海」報告会見を聞いた2019年07月18日

 日本記者クラブで「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」報告会見があった。プロジェクト代表の海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長と二人の漕ぎ手(原康司キャプテンと田中道子さん)が会見した。

 旧石器時代にわれわれの先祖が大陸から海を渡って来たことを「沖縄ルート」で実証するプロジェクトで、今月上旬、手漕ぎの丸木舟による台湾から与那国島への航海が成功した。

 私は1年前、このプロジェクトの「漕ぎ手募集説明会」のチラシを図書館で見かけた時から興味を抱いていた。だから、成功のニュースにはひときわ感動した。

 今回の会見で航海の詳細を聞き、あらためてこのプロジェクトの意義を理解し、3万年前の技術だけによる公開の難しさを知った。航海時間は30時間から40時間の見込みだったが実際には45時間かかったそうだ。

 3万年前、台湾は大陸の一部だった。当時も今も黒潮が流れていて、昔の潮流も推測でき、漂流では台湾から沖縄の諸島に流れ着くことができないと実証されている。だから、太古の人は己の意思で海を渡ったと推測される。

 与那国島と台湾の距離は100キロ、天候がよければ与那国島から台湾は見える。台湾の標高は与那国島に比べてはるかに高い。台湾から与那国島は見えないとも言われていたが、海部氏は現地調査し、海岸からは見えなくても高い山からは与那国島が見えることを確認したそうだ。

 与那国島は台湾の東方100キロにあるが、今回の航海の距離は225キロである。黒潮の流れを想定して南方から北東に向かう航海になるからである。それは地図を観て理解していたが、漕ぎ手たちは北東ではなく東南東に向かって漕いだと知って驚いた。潮の流れとの格闘であり、潮に乗る制御なのである。

 地球は丸いから海上から与那国島が見えるのは50キロ圏内に入ってからである。当然、出発地から島は見えない。それでも3万年前の人類は島を目指して海に漕ぎ出して行ったのである。その動機が何だったのはわからないが、探求心だったと思いたい。