『馬の世界史』を読んで騎馬遊牧民への関心が高まった2019年03月27日

『馬の世界史』(本村凌二/中公文庫)
 ローマ史の歴史家・本村凌二氏の本を何冊か続けて読んだ行きがかりで、次の本も読んだ。

 『馬の世界史』(本村凌二/中公文庫)

 本書は2001年に刊行された講談社現代新書の文庫化である。若い時から競馬ファンだった本村氏は、本書で日本中央競馬会の「JRA賞馬事文化賞」を受賞しているそうだ。

 私は競馬には不案内で競馬場に行ったことはなく、競馬の歴史に関心はない。なのに本書を読もうと思ったのは、本村氏の「もし馬がいなかったら、21世紀はまだ古代だった」という指摘に興味を抱いたからである。

 本書は馬の家畜化に着目して世界史を語っている。羊、山羊、牛、豚より遅れて家畜化された馬は人類に高速移動の手段をもたらし、馬によって人間の世界が拡がって文明が進歩した、という説は説得的である。

 馬は単なる移動の道具ではなく戦争の道具でもあった。人類の歴史に戦争の占める割合は大きいから、馬の歴史を語れば自ずから世界史を語ることになる。

 本書の面白さは、中央アジアの騎馬遊牧民をクローズアップしている点にある。古代のアッシリア帝国、ペルシア帝国、秦、漢などが成立した誘因に騎馬遊牧民の脅威があったという指摘は、馬好きならではの鋭い視点だ。

 また、著者は騎馬遊牧民によるモンゴル帝国が世界史のおよぼした影響を欧米人や中国人は過少評価しているとし、モンゴル帝国が出現したことによって「世界史」が姿を現したと主張している。先月読んだ杉山正明氏の『クビライの挑戦』とも重なり、興味深い。この分野の本をもう少し読みたくなった。