琉球の「組踊」を東京の国立劇場で観た(天皇・皇后も)2019年03月09日

 今年1月、「国立劇場おきなわ」で琉球古典音楽を鑑賞したとき、この劇場は琉球の歌舞劇「組踊」継承のために作られたと知り、機会があれば組踊なるものを一度は観たいと思った。その機会が思いがけなく早くきた。

 本日(2019年3月9日)、半蔵門の国立劇場で「組踊と琉球舞踏」という催しがあった。大劇場での1日限りの上演は満席だった。ロビーで玉城デニー知事を見かけて少しびっくりした。さらに驚いたことに天皇、皇后両陛下が観劇のため来場した。

 演目は以下の通りである。

 第1部 組踊「辺戸の大王」
 第2部 琉球舞踊(5演目)
 第3部 組踊「二童敵討」

 組踊は18世紀初頭に本土の能、狂言、歌舞伎等を参考に作られたそうだ。確かにこの3つの要素が感じられる。地謡と演奏によるゆっくりした所作の舞踊劇で、謡うような台詞も入る。

 地謡や台詞は沖縄方言(ウチナーグ)なので聞いて理解するのは難しいが、舞台両脇の電光掲示板に「日本語訳」が表示されるので問題はない。

 地謡や台詞を聞きながら電光掲示板を眺めていると不思議な気分になる。沖縄方言は明らかに日本語であり、部分的には聞き取れるが、電光掲示板の「日本語訳」がなければ全体の意味がつかめない。ヨーロッパには方言に近い各国語があるようだが、そんな人が近隣国の言葉を聞くと(たとえば、ドイツ人がオランダ語を聞く)と、こんな気分になるのだろかなどと考えた。

 島国の単一民族(?)と言われる日本人にとって、己れの文化の多様性を自覚させてくれるのが沖縄という存在である。

 組踊「辺戸の大王」は百二十歳(!)の大王の長寿を祝う宴で子や孫が踊りを披露し、最後は大王も一緒になって踊るという目出度い舞踊劇である。冒頭では「父母の御歳は今年百二十歳」と言っておきながら、最後の方では「大王様の百歳のお祝いですから」とアバウトなのも愛嬌だ。

 沖縄の新聞の死亡広告を見ると、故人の子や孫をはじめ多くの縁者が羅列されているのに驚く。大勢の子や孫に囲まれて踊る「辺戸の大王」を観て、あの羅列を連想した。