シアターコクーンの『唐版 風の又三郎』は盛況だった2019年02月10日

 シアターコクーンで『唐版 風の又三郎』(演出:金守珍)を観た。最近、往年の状況劇場の芝居が上演されることが多く、つい観たくなるのは、あの「わけのわからない」芝居をもう一度観れば、多少は「わけのわからなさ」が減少するのではとのかすかな期待のせいかもしれない。だが今回の観劇で、そんな期待は無意味で、芝居は解読するものではなく体験・体感するものだと再認識した。
 
 シアターコクーンはかなり大きな劇場だが、満席で立ち見チケットまで販売していた。若い女性の観客が多いのに驚いた。ロートルがノスタルジーで観劇しているだけではなく、若い主演俳優目当てにファンが押しかけているように思えた。

 私は1974年の『唐版 風の又三郎』初演(「夢の島」「忍ばずの池」のどっちだったかは失念)を観ている。だから、この芝居を観ながら役者の背後に往年の紅テントの怪優たちを重ねてしまう。

 窪田正孝(初演時は根津甚八)
 柚希礼音(初演時は李礼仙)
 北村有起哉(初演時は大久保鷹)
 丸山智己(初演時は小林薫)
 六平直政(初演時は不破万作)
 風間杜夫(初演時は唐十郎)

 もちろん、今回の大劇場での公演は紅テントの舞台とは演出も仕掛けも異なっている。猥雑さは減少し華麗である。美術が宇野亜喜良には驚いた。85歳で現役もすごいが、天井桟敷のイメージが強く、唐十郎世界とは無縁の人と感じていた。宇野亜喜良の甘美・妖艶な世界と唐十郎の怪しさがミックスした夢幻世界が舞台に展開しているのは新鮮である。

 この「わけのわからない」華麗な舞台が、往年の紅テントを知らない若い観客たちに何を刻印したのか興味深い。解けても解けない謎々は世代を超えて繰り返し再生されていくだろうか。