「筒井康隆展」で松浦寿輝氏との対談を聞いた2018年12月09日

 世田谷文学館で約2カ月間開催された「筒井康隆展」は本日(2018年12月9日)で閉幕である。昨日は同館の1階文学サロンで筒井康隆氏と松浦寿輝氏の記念対談があり、それを聞きに行った。

 「筒井康隆展」の展示を観るのは昨日を含めて2回目で、この作家の全貌を巨大年譜と多彩な現物で表現した空間を堪能した。私は高校生の頃から半世紀以上にわたる筒井康隆ファンなので、展示場を巡っていると自分自身の半生をたどっているような気分にとらわれた。

 松浦寿輝氏との対談は筒井康隆作品を巡る多岐にわたる話題にあふれていて面白かった。筒井康隆氏が創作意欲の背後に「社会への怒り」があると発言したのには少し驚いた。考えてみれば、すぐれた文学作品の多くは「社会への怒り」の表現のように思えてきた。人間は社会的動物だから、非常に個人的で内面的なことを語っても、それは「社会への怒り」の表現になりうる。

 筒井康隆氏は84歳だが、創作意欲は衰えていない。もう長編を書く予定はないと言いながらも「読者からテーマを募集しようか」との発言もあった。期待できそうだ。