テント芝居小屋「平成中村座」初体験2018年11月08日

 浅草寺の境内で平成中村座の十一月大歌舞伎・昼の部を観た。「十八世中村勘三郎七回忌追善」と銘打った公演である。10月の歌舞伎座も「十八世中村勘三郎七回忌追善」だったから2カ月続けての追善公演である。

 平成中村座の歌舞伎は初体験だ。勘三郎が江戸の芝居小屋を再現した仮設劇場「平成中村座」を旗揚げし、日本各地だけでなくニューヨークにまでその芝居小屋を持ち込んで公演したという話は新聞や雑誌で知っていて、関心はあった。だが、観たいと思いつつ機会を逸し、勘三郎没後7年が経過した。

 観劇の動機は「平成中村座」という芝居小屋がどんな所だろうという興味である。テントだというが、写真では普通の立派な芝居小屋に見える。

 その芝居小屋は、仲見世通りを抜けて浅草寺を回った裏手に建っていた。遠くから見ると大きな倉庫のようにも見える。近づいてよく見ると、垂直の壁は確かにテントだ。紅テントや黒テントとは規模が違う。芝居小屋の前には屋台風の売店も並び、華やかな風情である。

 昼の部の演目は「実盛物語」「近江のお兼」「狐狸狐狸ばなし」の3本、もちろん勘九郎と七之助の見せ場もあり、歌舞伎はエンタメだと了解できる舞台だった。勘九郎の5歳の次男長三郎が科白の多い役を可愛く立派にこなしているのに感心し、歌舞伎の家に生まれた子供の優位と宿命を再認識した。

 遮音性が低いテント小屋なので、芝居の最中に上空を飛ぶヘリコプターの爆音が聞こえてくることがあった。うるさいと思うより、一過性の芝居を観ているという臨場感に浸る気分になった。