半世紀前の概説書でギリシア史の復習2018年03月10日

『世界の歴史 4 ギリシア』(村田数之亮/河出書房新社)
◎昔も今も

 先月、塩野七生の『ギリシア人の物語』全3巻を読んだ。その印象が残っている内にと思い、次のギリシア史の本を読んだ。以前から書架に眠っていた叢書の1冊だ。

 『世界の歴史 4 ギリシア』(村田数之亮/河出書房新社)

 『ギリシア人の物語』全3巻を読んだと言っても、その内容が時間とともにどんどん消えていくのは仕方ない。関連書を続けて読めば多少なりとも定着するものがあるのではと期待した。無駄な抵抗のような気がするが。

 本書が刊行されたのは1968年、ちょうど半世紀前だ。手ごろな最近の啓蒙書もあると思うが、2000年以上昔の話なのだから50年ぐらいはたいしたことはないと考えた。

 それでも、書き出しの「現代のアテネ」の記述で面食らった。「現代のアテネは、かつてのアッテカの都としてあるのではない。(…)ギリシア王国の首都であり(…)」とある。そうか、当時のギリシアは王国だったのか。調べてみると、1967年に軍事クーデターがあって反クーデターの国王は亡命、1968年から1974年までは軍事独裁政権、その後は共和政になっている。ギリシア史といえば古代のアレコレが思い浮かぶが最近半世紀もいろいろあったのだ。
 
◎今も昔も

 本書は歴史学者による古代ギリシア史の啓蒙書で図版も多い。読みやすくてわかりやすかった。

 前半の三分の一がエーゲ文明から大植民時代の話でアテネやスパルタはまだ主役ではない。

 真ん中の三分の一がペルシア戦争とペロポネソス戦争の話でアテネとスパルタが主役に躍り出る。

 後半の三分の一で語られるのは、ポリス社会の衰亡、アレクサンドロスの世界帝国とヘレニズム時代、そして世界帝国の解体からプトレマイオス朝エジプトの滅亡(クレオパトラの死)までである。

 ここで語られているのは二千数百年に及ぶギリシア文明の勃興から衰亡に至る波乱万丈の歴史である。並行して、同じ時代に存在したアケメネス朝ペルシアの興亡も語られている。さまざまな事象が発生したダイナミックな時間の流れと空間の広がりを感じた。

 紀元前の遠い昔の歴史ではあるが、それを読んでいると近現代の事象と同じだと感じることが多い。外交、同盟、国家、帝国、公共、個人、コスモポリタンなどなど人間とその集団が抱える課題は今も昔もほとんど同じに見えてきた。

 もちろん、現代の目で歴史で叙述すれば、そこに現代的課題が反映されざるを得ないということはあるだろうが。

◎パウサニアスの評価は…

 同じ事象であっても、塩野七生の『ギリシア人の物語』の描き方と異なる箇所がある。当然のことであり、それらをひとつ一つ確認するのも読書の楽しみである。

 ただ、塩野七生がかなり力を入れて好漢として描いたスパルタの将軍パウサニアスの扱いが大きく異なっているのには驚いた。

 パウサニアスはツキディディスが『戦史』で悪く描いたために評価が低いと、塩野七生がツキディディスを非難することになった人物である。塩野七生によれば、20世紀に入ってドイツの学者たちが、パウサニアス批判の根拠とされた文書(彼を裏切者であるとする文書)が偽物だと実証したそうだ。

 村田数之亮は本書でパウサニアスを「ペルシアと通じて私利をむさぼった」残念な人としている。ドイツの学者たちの実証は本書刊行の後だったのかもしれないと思い、ネット検索してみたがよくわからない。ウィキペディア(日本語)でもパウサニアスは裏切者とされていて再評価の記述はない。なぜだろうか。もう少し調べてみたい。

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