フィールドワークの話は面白い2014年12月29日

『たけしのグレートジャーニー』(ビートたけし/新潮社)
 ある科学者についてネットで検索していて、『たけしのグレートジャーニー』(新潮社)という本を見つけた。ビートたけしと11人の科学者たちとの対談集で、その中に私が関心を抱いている科学者が複数いたので購入した。

 本書は雑誌『新潮45』に連載された対談をまとめたもので、次の11人が登場する。

  1 関野吉晴(探検の達人)
 2 西江雅之(文化人類学の達人)
 3 荻巣樹徳(植物探検の達人)
  4 山崎寿一(ゴリラの達人)
  5 松浦健二(シロアリの達人)
  6 塚本勝巳(ウナギの達人)
  7 長沼毅(辺境生物学の達人)
 8 佐藤克文(海洋動物の達人)
 9 窪寺恒己(ダイオウイカの達人)
 10 鎌田浩毅(地球の達人)
 11 村山斉(宇宙の達人)

 肩書がすべて「…の達人」となっているのは、雑誌連載のタイトルが「達人対談」だったからだろう。それにしても、何とも大らかな肩書だ。それが楽しい。読みやすくて刺激的で面白い対談集だ。うかつにも、ビートたけしがディスカバリー・チャンネルばかり見ている科学愛好者だとは知らなかった。

 ここに登場する大半の「達人」はフィールドワークをベースに研究をしている。だから、科学者であると同時に探検家だ。抽象的な知の探検ではなく体を張った具体的な探検である。10、11の「地球の達人」「宇宙の達人」はフィールドが広大過ぎるので、さすがに具体的な現地報告とはいかないが、他の人々の対談は人外魔境に赴いた探検家の冒険譚を聞く趣がある。

 私の子供時代には、アフリカ探検や南極探検の物語に心がときめいたものだ。昔は地球上に「秘境」がたくさんあったが、いまやその多くが秘境でなくなり、探検に憧れる心も失せてしまったように思える。

 本書を読んで、自分の中で色あせていた探検への憧れがかすかに甦り、探検家たちの物語に抱いた遠い昔のワクワク感を思い出した。

 科学の最前線には興味深い話題がたくさんあり、どれもが刺激的だ。頭だけで探究する分野も魅力的で好奇心を刺激されるが、つかみ所のないもどかしさも感じる。こちらの頭がついて行けないのだから仕方ない。やはり、頭と体の両方を使わなければ探究できない分野の方が感情移入しやすくて面白い。

 頭も体も衰えはじめている身で本書に接し、そんな感想を抱いた。そして、あらためて頭も体も鍛えなければと思った。やれやれ。

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